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どんな人が出願しやすいか?アメリカ大学院のCS修士課程の出願要件

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kashitakaエンジニア / 2025年にCS学びにアメリカの大学院に進学

前回の投稿ではエンジニアのキャリア選択にアメリカの大学院進学が良いキャリアステップでは?ということを書きました。

前回:エンジニアのキャリアにアメリカの大学院進学というステップ

ただ、大学院という選択肢に興味を持ったとして、次に思うのは「実際に出願できる大学はあるのか?」ということだと思います。

そこで今回は、大学院のCS課程の出願要件を説明します。読んだ人が大学院出願を本気で考えるかの材料として役立てられたら幸いです。

あくまで出願要件なので、実際に受かるか?となると別問題で、合否は様々な提出書類の総合力で決まります。出願要件、つまり「勝負に土台に最低限立てるのか?」という話になりますが、考えようによっては勝負の土台に立てたならあとは勝負に全力を尽くせばいい。まずは試合の出場権のオプションがどれだけあるのかを知るのはモチベーション上重要です。

要件は「4年制大学を卒業していること」

これはおそらく全ての大学院の出願要件に書かれています。

流石に大学院なのでこれは当たり前だし、大学院に興味を持つ人は大学を出ているはずなので障壁にはならないです。

アメリカの大学院の数は1000以上ある

EducationUSAのページによれば、アメリカ修士プログラムの数は1000以上あるそうです。つまり4年制大学さえ出ていれば、選ばなければ、どこかは入れると想像できます。

実際、TOEFL(後述)を受験すると希望者に対して各大学からのダイレクトメールが届くようになりますが、自分が知らなかった無数の大学がCSの修士課程を提供していることを知るようになります。

ただ、1000万円以上の莫大な費用を払い、1-2年の期間をかけて行く以上、誰もが少しでも良い大学に行きたいと思うはずです。

トップ校の出願要件

大まかに言えば下記のような観点で、出願できる大学が多いかどうかが決まります。

  • 英語: TOEFL/IELTSのスコア
  • 大学での経歴: 専門とGPA
  • その他: 大学やプログラム個別の話

英語

まず、英語能力の証明として英語のテストスコアの提出が必須になっています。当然スコアが高いほど出願できる大学は多くなります。

出願要件として足切りラインまたは推奨ラインを設定している大学が多です。下記はその例(2024年調べ)

大学名 専攻 要求(または推奨)スコア
Stanford CS TOEFL 最低100
MIT CS IELTS 最低7, 推奨:7.5
Harvard CSE TOEFL 最低80
Carnegie Mellon CS TOEFL 100以上推奨
UC Berleley EECS TOEFL 最低90, 合格者平均100以上
Cornell CS(Tech/Ithaca) TOEFL 100(S22/R20/L15/W20以上)
Columbia CS TOEFL 101推奨
Georgia CS/CSE TOEFL 100
UC Los Angeles CS TOEFL 最低87 (W25/S24以上)

多くのトップ校ではTOEFL90-100点が足切りor推奨ラインとなっており、スコアが高いほど出願できる大学が増えます。それゆえTOEFL対策界隈では100点を目指す人が多く、100点超えが重要な達成基準です。なお、リストの中ではMITのみTOEFLを受け付けておらずIELTSが必要です。

コーネルやUCLAなどは総合スコアだけでなく、S:Speaking/W:Writing/R:Reading/L:Listeningの科目ごとのサブスコアにも要件があります。UCLAのS24以上は生粋の日本育ちには厳しい要件です。表に載せてませんが、プリンストンはS28が要件で、これは相当ペラペラな英会話力なので日本育ちには事実上出願が不可能だったりします。

ハーバードは意外と要件自体は低かったりします(足切りラインでは受からないでしょうが)。このように大学ごとに様々なので、もし特に行きたい大学があれば調べてみるといいと思います。

100点の難易度は普通の日本人にとって非常に高い基準ですが、前述のGPAや学位という過去の変えられない要素と違い、語学なので頭の良さ関係なく気合いと根性で時間的コミットメントで解決していける要素なので、全力投球して可能性を広げられるといいです。

学部での専門

特定の学位を要件に定めているプログラムがあります。CS学位を持ってる人は出願できるところが多く、続いて理工系>文系の順に有利になります。

やはり、CS専攻なので大学によっては出願要件として明確にCS学士を定めているプログラムもあります。また、CSである必要はないが、理工系であることを要件としているところもあります。あとは、線形代数や統計論を履修したかとか、具体的な授業の要件を書いていることもあります。ただ、超トップ校は逆に要件を何も定めていないところもあり、ここは大学ごとの考え方によるようです。

例えば、スタンフォードのComputer Science(CS)はハッキリと「CSの学士は必要ない」と書かれているし(ただし、特定の授業に関する要件がある)、ハーバードのComputational Science and Engineering(CSE)はより曖昧で、「職務経験において顕著な功績」という書きっぷりです。多様性を重視しているプログラムでは「学部相当のCS知識」や「強いCSバックグラウンド」など曖昧な要件はよく目にします。

ジョージア工科大学(GATech)のCSEは「プログラミング言語をやっており、工学部か数学系」のような要件で、理工系の学部卒で仕事でエンジニアをやっていればOKと取れます。逆に文系大学だとエンジニアの職務経歴があっても難しいような気がします。

厳しい要件だと、テキサス大学オースティン校のCS(オフライン)は「コンピューターサイエンスの学士か同等のものだけ」と書いておりCSやCSE等の卒業者に限定されている表現だと思います。GATechのCSでは「C言語を含むコンピュータサイエンスの学部レベルでの確かな知識を強く推奨」という要件で、CSの学位もちでもC言語となると難しい人いるんじゃ?という要件。

ちなみに僕は電気系の専攻だったのでCS学位の要件が厳密なところには出願しませんでした。

文系卒向けのCS修士課程リストは調べてないので語れませんが、ネットでみた人だと学部通い直す人や、学位の要件が緩いところを探して出願書類で技術アピールする人など戦略が色々あるらしいです。

GPA(大学の成績)

明確な足切りポイントを定めている大学はないので(あっても3.0とか低め)、出願時点の要件としてはクリアしやすいです。

ただし、合格者の平均を書いているプログラムは結構あり(例:カリフォルニア大学バークレー校(UCB)のEECSは3.7など)、事実上の合格ラインを察する感じです。

で、このGPAが日本人にとって馴染みがなさすぎだし、大学の成績書を見返してもどこにもGPAなど書いてません。どうするか?

成績翻訳サービス(WES)を使う

大学の成績をGPAスケールに翻訳してアメリカで使える成績証明書を発行してくれる組織があります。代表的なものがWorld Education Services(WES)。ここで作った成績証明書は後で出願の時も提出物として使えます。

証明書を発行するのは数百ドルかかって手続きも非常に煩雑ですが、とりあえずGPAに変換するだけならWebで無料ですぐチェックできます。

自分がどの程度のGPAがあるかは、大学院の選択肢を知る上で重要な要素なので、まずは大学の教務課に問い合わせて成績をゲットして変換してるといいです。

ちなみに、成績が良くなかった記憶の人もとりあえず変換してみるといいと思います。というのも、真偽不明ですが、

  • 日本はGPA文化がないので平均GPAが低いらしく、そのためか、日本人はWESを通すとGPAが高めに出る説
  • 卒業している大学の難易度によってもGPAの加点具合が違う説

という噂があるので、WESの換算結果を見るまで落胆しない方がいいです。

その他の要素

あとは大学によっては個別具体の要件があり、実質今日本にいる人は無理というところもあります。

例えば

  • UCB の CS (EECSじゃないほう) は対象はUCBの在校生のみで博士課程に行く前提の人という感じ
  • ワシントン大学のCSEのProfessional Trackはシアトル在住であることが出願要件
  • テキサス大学オースティン校のSoftware Engineeringは外国人向けのビザは発給なし

こういうのはまあどう転んでも無理なので候補にはなり得ないです。

コスト

資産を要件にする大学はないし選考でも絶対にチェックはありません。ただあえて書いたのは、学費+生活費がものすごく高いので仮に受かっても実質行けない大学もあります。

例えば、トータル2200万円ほどかかるプログラムもあり、これくらいの額になると受かっても実質行けないという人はかなりいると思います。

コストは立地や期間よって様々ですが、概ね1300-2000万くらいかかることは頭に入れておき、出願時点で無理そうなところは候補から外すか、お金が貯まるまで出願を先のばすかします。

若い人には返済不要の奨学金の資金調達方法もあります。この辺りのコストの話は別の投稿で解説していきます。

最後に

まとめると出願要件、つまり「試合の土俵に立てる」プログラムの多さは、学部の専門、GPA、TOEFLスコアで決まります。

TOEFLのスコアは大学院を志す段階で良い点の人はいませんから、これから100点以上を目標にするとして、残る問題は大学の専門とGPAになります。これは人によって状況が異なるので、自分がどれほど出願できそうな大学があるかを調査するといいです。

次のアクションとしては下記のようなものになると思います。

  • 前述のWESを使ったGPA計算してみる
  • 各大学のサイトで要件をみて、どのあたりが狙えそうかリストを作ってみる

大学のプログラムの探し方については別の投稿で説明していますので、興味があればご参照ください:アメリカ大学院のCS修士課程の探し方

もちろん、出願はできても合格の可能性はどうなの?となると思います。合否を決定する材料となる出願書類については右の投稿していますのでご参照ください: アメリカ大学院出願の提出書類とその準備について

ではでは、ありがとうございました👋


kashitaka
kashitaka

ソフトウェアエンジニア。2025年アメリカのGeorgia Techの修士課程でCSを学ぶ予定。 ブログでアメリカの大学院の受験のあれこれを書いていきたい。 経歴:埼玉育ち→東工大→新聞社→リクルート→ベンチャーCTO→(株)サイカ→CSを学びに渡米