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アメリカ大学院出願の提出書類とその準備について

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kashitakaエンジニア / 2025年にCS学びにアメリカの大学院に進学。エンジニアのCS留学を応援したい

今回はアメリカの大学院に出願する際に必要となる提出書類の話です。合否を決定する重要な要素であり、私自身も反省点が多く、その辺りも語ります。

合否は書類の総合判断で決まる

アメリカの大学院の入試は日本の大学院と違い、ペーパーテストがありません。その代わり、様々な書類を提出し、それらの総合的な観点で合否が決定します。

私も複数の大学への応募を通して段々見えてきたのですが、基本的には大学側が応募者に問うことは、その応募者が:

  • この大学のプログラムでやっていけそうか(学力・経験・モチベの面で)
  • 大学の学びの場やコミュニティに貢献しそうか(バックグラウンドや行動力、人間性の面で)

という点だと思います。前者はまあ当然として、後者について授業料を払う立場の学生側がどう大学の発展に寄与するのかを問われるのは、日本の大学生ならあまり考えない視点です。

これらの観点を大学に伝える材料として、どのような書類が求められるのかを説明していきます。

提出書類

Statement of Purpose(SoP) と Personal Statement

最も重要な書類で、いわゆる志望動機書的なものです。全ての大学でいずれか、あるいは両方の提出が必要です。分量は大抵それぞれA4で1-2ページ(500-1000語)になります。

厳密なプロンプト(質問文)は大学によって少しずつ違います。大体次のような要素を書くように求められます。

  • SoP: 志望動機書。なぜそのプログラムを目指すか、今までキャリアの背景と今後の目標、入ってやっていく準備はどう整っているか。
  • Personal Statement: その分野・研究を目指すに至った個人的な背景、インスピレーション、その人間性がどう学びの場に貢献するか等

参考までに実際のプロンプトを末尾に載せておきますので、気になる人は読んでみてください。

反省点

私の反省はこれを独力で仕上げたことでした。世の中には10-20万円程度の留学コンサルや、提出書類の添削サービスがあったりしますが、それを使いませんでした。

というのも、私はこの手の作文は日本の就活などでも得意だったので内容で勝負できる自信がありました。また、留学コンサル等のコスパ・タイパの不透明さも納得できず、英語の上手い表現や間違いはChatGPTGrammarly(校正ツール)を使えば問題ないと思いました。

ただ実際にやってみると、書き慣れていない英作文1000語程度で内容を組み立てていくのは思った以上に正解がわかりませんでした。確かにツールを使えばかなりそれらしい作文は書ける。書けるんだが、これでいいのか?の判断が全くつかないのです。おそらく75点くらいの完成度にはなっていそうだが、そこからの上げ方がわからない感覚でした。

ChatGPTに「改善提案してくれ」とお願いしても、「この点はもっと具体的に」とか「この観点も盛り込め」とか言われるのですが、全体的に伝えたいメッセージはブレるし、それで字数オーバーすると今度は、個人的に重要な部分をすごく簡素な言い方にしたりと、本当にこの提案は筋がいいのか?となるわけです。

なので基本的に日本人はプロに添削を頼むのが無難です。ただコンサルや添削サービスは高額だし、信頼できる業者もよくわからないので調査とコスパの評価も含めて、コストと手間はかかりそうです。検討してみてください。

推薦書 x 3通

応募者を多角的に見るために、異なる推薦者からの視点が求められます。推薦者には、「私(推薦者)はこんな経歴があって評価できる立場の人間で、この応募者はこんなにすごいぞ!」ということを書いてもらいます。

大抵どの大学も3通です。いろんな視点から逸話を書いてもらえる人選で臨みます。一般的には大学の指導教員と、会社の上司に依頼します。実際は骨子を日本語で打ち合わせた上で応募者が英語で代筆する場合が多いと思います。相手の都合があるため時間がかかるので早めにやります。

反省点

私は自分の仕事面を語ってくれる推薦者として、前職の上司にお願いしました。というのも、現職の上司にお願いすると、「え、じゃあきみ会社辞めるの?」となってややこしい話になるからです。ところが、アメリカの大学院としては、現職の上司の推薦書がないことは非常に心象が悪いようです。

私が「現職」である重要性を知ったのはGeorgia Techの出願でAdditional Information(後述)の下記の質問でした。

もし該当する場合、その矛盾や弱点の理由を説明してください。例えば、...(中略)...、推薦者が現職の直近の上司でないなど。

これを初めて見た時に驚いたのですが、現職の上司でないことは矛盾や弱点だと言うのです。社会人経験を経てから大学院に進学するのが一般的なアメリカの大学院では、企業においても大学院を志すことは前向きに捉えらえれ、現職の上司が推薦書を書くのは一般的のようです。ただ、封建社会の日本ではそんなことを打ち明ければ会社組織への忠誠を疑われ、「いずれ辞める人」という烙印の下、重要な役職・プロジェクトから外されたり、査定会議で昇給の余地が無くなることも想像できます。

私の場合はすでに複数の大学に推薦書を提出しており、この事実に気がつくのはかなり遅れました。気づいた後は言い訳欄で現職の上司の推薦書がない理由として日本の企業風土を説明するようにしました。が、やはり現職の上司の推薦書が無難です。会社の文化、上司との関係や、ポジション等の都合で難しい方もいると思いますが、なるべく穏便にお願いしましょう。どうしても無理なら私のように言い訳欄で説明しましょう。これでも合格はできましたので。

CV/Resume

履歴書です。大学向けなので就活向けよりアカデミックな要素を増やしました。例えば、大学での専攻や学会発表、論文、受賞歴を追加しました。また、サイドワークとして個人的な国際経験の話も入れました。

エンジニアの経歴書は長くなりがちですが、履歴書は2ページとするのが一般的なようなので、1ページあたりの情報量を濃くしてページ数は2ページに抑える工夫を色々しました。

サンプルは結構ネットにあります。コロンビア大学のキャリアセンターのサンプル

GRE

大学院出願のための共通テストのようなものです。GREの詳細は別投稿で詳しく話しますが、ここでは提出の要否について書きます。大学によって以下の3パターンがあります。

  • 必須: 必ずスコアを送ること。
  • 提出不可: スコアを送ってはいけない(SoP等でスコアを言及してもいけない)。学力で判断したくない大学はこのポリシーを定める。
  • 任意: スコアは送っても送らなくてもOK。

最後の「任意ってどっち?」って思います。結論、ちゃんと良いスコアを取って送ったほうがいいそうです。大学側もおそらく重視はしてないのでしょうが、なんだかんだ送られてきたら見ているようなので、任意は送るということにしてスコアメイクを頑張りしましょう。

TOEFL/IELTSスコア

英語の試験のスコアです。語ることが多すぎるのでここでは触れません。目指せTOEFL iBT100 / IELTS7.5 超え!😵‍💫

Transcript(成績証明)

日本の大学の成績をWorld Education Service(WES)と言う翻訳サービスを通してGPA 4.0スケールにして提出します。WESについては以前の出願要件の投稿で書きましたので参照してください。

その他提出物

大学によっては求められることがある提出物についてです。長くなるので箇条書きで書いていきます。

  • Additional Information
    • 呼び方は様々。自分の出願書類について言い訳ができる。GPAが低いとか、中退しているとか、推薦書が直近の上司じゃない理由とかを釈明できる。
  • Video Interview
    • 大学が課す質問に答える動画を送る。出願ページ上でテストみたいにして受けて録画する。大体3問くらい質問が出題され5分程度の時間制限で回答した動画を提出する。スピーキング下手な日本人にとっては超苦手で終わると自己嫌悪に陥る。大学の過去の質問についてはReddit等で調査する。
  • Publication/Paper
    • 出版歴や論文の掲載歴を語ったり、コピーを提出できる。博士課程の人は特に重要そうだ。あれば自分の出版歴や論文歴、国際学会のポスター・アブスト掲載などの記録を掘り起こしておく。
  • SNSリンク/個人のWebページ
    • 個人的な見解だが、エンジニアはGithubを是非載せたい。授業でコーディングもあるのでコードを書けることを証明するために自慢のレポジトリはピン留めしておこう。

Tips

最後にテクニックを紹介します。

今年出願しなくても出願サイトに登録してみる

すべての大学が独自の出願ウェブサイトを持っています。そして自分が興味ある大学の出願フォームを実際に見てみるのが一番イメージが湧き、対策が立てやすいです。

TOEFLのスコアメイク等の準備で時間がかかるため今年は出願しないという人も、とりあえず出願サイトに登録してみて、SoPのプロンプトがどんなものか読んだり、個別の質問項目も目を通しておくといいです。

提出ボタンを押さない限りは応募したことにはならないし、お金もかからないのでリスクはありません。

出願後もスコアを更新できる

TOEFLやGREのスコアは出願後も更新できる大学が多いです。つまり、たとえ出願締め切り後でもTOEFLやGREの自己ベスト更新を目指せますし、それが有利に働く可能性があります。

大抵、出願時期の1ヶ月前の11月頭くらいがスコアメイクのデッドラインで、そこまでに足切り点をクリアしておく必要はあります。ですが、その後も勉強を続けてさらに自己ベストを更新し、出願後に追加提出することができます。大学側も出願締め切り直後に書類を読んで合否判断するわけではなく、2,3ヶ月かかるプロセスになるので、多少遅れても点数を上げられるといいです。

私はこのことは知らなかったので、TOEFL足切りスコアを取り切って完全にTOEFL対策はやめましたが、知っていたらさらに勉強して12月中に1本くらいテストを受けたと思います。なぜなら11月から12月にかけてはエッセイを書きまくっており、ReadingやWritingのスコアアップの可能性もあり得たので。

おわりに

出願の提出物は合否を決める直接的な要素のため、準備にも多くの時間を割くし、それゆえ私自身も色々失敗があったので詳細に書きました。参考になれば幸いです。

ご意見・ご感想はXにてお寄せください。お読み頂きありがとうございました 🙇‍♂️

付録

下記は SoP と Personal Statement のプロンプトのサンプル。それぞれ聞かれていることの違いを感じ取れるように参考まで置いておきます。

SoP

ハーバード

The statement of purpos is very important to programs when deciding whether to admit a candidate. Your statement should be focused, informative, and convey your research interests and qualifications. You should describe your reasons and motivations for pursuing a graduate degree in your chosen degree program, noting the experiences that shaped your research ambitions, indicating briefly your career objectives, and concisely stating your past work in your intended field of study and in related fields. 

訳: あなたのステートメントは、焦点が明確で情報豊富なものであり、あなたの研究分野に対する興味や資格を伝えるものでなければなりません。選択した学位プログラムを志望する理由や動機について述べ、それに至った経験がどのようにあなたの研究の志を形成したのかを説明してください。また、簡潔にあなたのキャリア目標に触れ、志望分野や関連分野における過去の活動についても簡潔に記述してください。

カーネギーメロン

Prepare a concise one or two page essay in PDF format that describes your primary areas of interest, your related experiences, and your objective in pursuing a graduate degree at Carnegie Mellon. Your essay should be specific in describing your interests and motivations. When describing your interests, you should explain why you think they are important areas of study and why you are particularly well-suited to pursue them. You should describe any relevant education, research, commercial, government, or teaching experience.

Discuss your purpose in pursuing a master's degree in Computer Science. For example, you might explain how advanced study in Computer Science fits into your future career ambitions. There are no right answers, and you do not need to have worked out your future plans in detail. We just want to see that you have thought your purpose through. If your background is unusual, this is also the right place to explain it to us.

長いので和訳無し

Personal Statement

ハーバード

Please describe the personal experiences that led you to pursue graduate education and how these experiences will contribute to the academic environment and/or community in your program or Harvard Griffin GSAS. These may include social and cultural experiences, leadership positions, community engagement, equity and inclusion efforts, other opportunities, or challenges.

訳: あなたが大学院進学を目指すに至った個人的な経験について説明してください。また、これらの経験が、あなたのプログラムやハーバード・グリフィン大学院(GSAS)の学術環境および/またはコミュニティにどのように貢献するかについても述べてください。これらの経験には、社会的・文化的な体験、リーダーシップ経験、コミュニティへの関わり、公平性とインクルージョンに向けた取り組み、その他の機会や挑戦が含まれる場合があります。

Cornell Tech

Cornell Tech fosters an innovative environment of creativity, technical depth, and leadership. Please submit your personal statement that describes your interest in the master’s program. Your essay should highlight your personal and professional attributes and how they will contribute to Cornell Tech’s mission, your specific master’s program and the tech ecosystem in New York City. Include any personal experiences that demonstrate your creativity, leadership, and technical abilities. In particular, elaborate on the creative and technical aspects of any projects you have completed, your entrepreneurial or leadership skills, and your experience working on team projects.

訳: Cornell Tech は、創造性、技術的深み、そしてリーダーシップを育む革新的な環境を提供しています。修士課程への関心を述べるパーソナルステートメントを提出してください。このエッセイでは、あなたの個人的および専門的な特性を強調し、それらが Cornell Tech の使命、希望する修士課程、およびニューヨーク市のテックエコシステムにどのように貢献するかを述べてください。また、創造性、リーダーシップ、および技術的能力を示す個人的な経験を含めてください。特に、これまでに完成させたプロジェクトの創造的および技術的な側面、起業家精神やリーダーシップのスキル、チームプロジェクトでの経験について詳しく述べてください。

以上


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ソフトウェアエンジニア。2025年アメリカのGeorgia Techの修士課程でCSを学ぶ予定。 ブログでアメリカの大学院の受験のあれこれを書いていきたい。 経歴:埼玉育ち→東工大→新聞社→リクルート→ベンチャーCTO→(株)サイカ→CSを学びに渡米